疾患領域別の研究課題

A. 疾患領域別の研究課題

A1. オンコロジー 

A1-1 新規のがん免疫抑制性細胞の探索に関する研究

除去することによりがん免疫活性を高めることが期待される新規の免疫抑制性細胞を見出す研究を募集します。特に、以下の要件を満たす研究を募集します。

  • ヒトの臨床サンプルを用いた研究
  • 非臨床モデルで検証可能な研究
  • 新規の免疫抑制性細胞の表面マーカーを同定可能な研究
    (注意)すい臓がんを用いた研究、制御性T細胞関連の研究は対象外です。

A1-2 固形がんに対する宿主免疫応答を惹起し薬効を強化する技術

がんのheterogeneityの克服を目的とした、以下のような技術を募集します。免疫細胞療法や多重特異性抗体などに応用可能であることが要件です。

  • 自然免疫系に働きかけネオ抗原に対するT細胞応答を誘導できる技術
  • 腫瘍微小環境を改変する技術(免疫抑制環境の解除など)

A1-3 CAR分子の最適化技術およびCARに適したバインダーを取得する技術

生体内で十分な機能を発揮するためのCAR分子の最適化技術を募集します。特に、CARに適した抗原結合部位の取得とそれに続く最適化技術、およびCAR分子各ドメインの最適化技術が該当します。

A1-4 Adoptive cell therapyのon-target, off-tumor毒性回避に繋がる技術および評価系

以下のような研究を募集します。

  • 腫瘍環境特異的にCAR-T細胞の活性化を達成し、正常組織へのon-target毒性を軽減・回避することに繋がる技術
  • Adoptive cell therapyのon-target毒性を評価するためのin vitroおよびin vivo評価系

A1-5 がんに対する免疫細胞療法をOff the shelfで提供する技術

免疫細胞療法をOff the shelfで提供する技術(他家細胞技術、in vivo遺伝子導入技術など)を募集します。均一な細胞の大量調製法や大容量に適用可能な凍結保存技術など、他家細胞の臨床応用へ向けた製造法や分析法も含みます。自家CAR-Tと同等の薬効が期待できる技術であることが要件です。
 (注意)NK cellは対象外です。 

A1-6 がん治療への適用を目的とした、腫瘍組織特異的なバインダーおよびその取得法

腫瘍組織(腫瘍細胞・組織、免疫細胞、間質細胞など)特異的な標的に対する抗体または抗体様結合分子(フラグメント抗体を含む)ならびにその探索法研究を募集します。腫瘍組織特異的とは、正常組織との発現量の差ではなく、腫瘍組織特異的な立体構造変化(正常細胞膜上では非活性型をとるが、腫瘍組織では活性型の立体構造をとる、など)や修飾(リン酸化や糖鎖修飾など)に特徴を持つ標的を指します。腫瘍組織特異的な標的の同定法とその抗体様結合分子の取得法の組み合わせの提案を期待します。

A1-7 がん治療を目的としたbi-/multi-specific抗体の探索研究およびデザイン

以下のような研究を募集します。

  • ユニークなMoAを有するbi-/multi-specific抗体または抗体様結合分子(フラグメント抗体などを含む)の探索研究
  • 人工知能(AI)/機械学習(ML)などを用いた抗体デザイン
  • A1-8 細胞膜上に近接する2分子を標的とした研究

    細胞膜上の2分子を標的とした近接誘導に関する研究を募集します。近接分子の検出・評価方法、創薬研究に結び付く近接分子の探索・同定・生理学的作用解析、2分子を認識するバインダーなどを含みます。

      A1-9 がん特異的なネオ抗原およびその探索技術

      以下の要件を満たす、がん特異的な新規抗原およびその探索技術を募集します。

      • 新規抗原探索アプローチに何らかの新規性がある
      • タンパク質レベルでの発現がvalidateされた抗原である
      • 臨床サンプルやリアルワールドデータの解析が可能である
      • A1-10 腫瘍環境に依存して機能を発揮するペプチドおよびその探索技術

        腫瘍微小環境は正常組織に比べて、ATP濃度が高い、酸素濃度・pHが低い、プロテアーゼが豊富である、などの特徴を有しており、それらの環境下でのみ活性化されるような薬剤は正常組織への影響を減らしつつがん細胞への効果を高めることができます。上記のような特定の環境下でのみ機能を有する(抗原への結合が強くなる、ペイロードが解離する、など)ようなペプチドおよびその探索技術を募集します。

          A1-11 腫瘍組織の間質に浸透性・滞留性の高い抗体・ペプチド・低分子化合物

          間質を多く含むがん(膵臓がんなど)への高い浸透性・滞留性を有する抗体、中分子化合物、低分子化合物を募集します。分子の標的が明らかになっているものが好ましいです。また、抗体はVHH抗体やscFvなどの分子サイズの小さいフォーマットを含み、物性の安定したものが好ましいです。

            A1-12 がん治療・診断のためのセラノスティクス創薬

            タンパク質工学を活用した、がん治療・診断のためのセラノスティクス創薬に関する研究を募集します。標的、技術、アイデア、アプローチなど研究内容は問いませんが、臨床応用可能性など医療ニーズを踏まえた当該研究の活用法についてのアイデアを併せ持った案件を募集します。特に、がん組織・細胞に対して特異的に結合することが可能なペプチドやタンパク質(フラグメント抗体や改変タンパク質)をベースに、RIやペイロード、近赤外光プローブなどをコンジュゲートしたモダリティ研究に興味を持っています。

              A1-13 臨床を外挿した腫瘍微小環境の評価モデルに関する研究

              以下のような評価モデルを募集します。

              • 膵臓がんの特徴を忠実に反映したin vivoおよびex vivoモデルを募集します。具体的には、間質領域を70%以上含む、消化酵素の発現が高い、管腔などの組織構造がヒト臨床像に近いと考えられるin vivoモデル、もしくは膵臓がんのスライスカルチャーなどのex vivoモデルでハイスループットに薬剤の殺細胞作用や浸透性を評価できるモデルが好ましいです
              • 肺がん、膵臓がん、大腸がんの臨床的腫瘍微小環境(特に免疫細胞や間質細胞の浸潤)を反映し宿主免疫応答を評価しうるマウスモデル、in vitroモデル、ヒト組織を用いたex vivoモデルを募集します
              • A1-14 放射線治療の改良研究

                • 放射線治療の改革に繋がるような、以下の研究・アイデアを募集します。特に、放射線の薬理作用メカニズムに基づいた新規コンセプトや新規アプローチに興味があります
                • 既存の放射線治療の効果を増強したり、安全性を高める研究(併用療法を含む)
                • 全身治療にも応用でき、全身転移腫瘍を標的とし得るアイデア
                  (注意)既存薬の併用や標的α線治療(Targeted Alpha Therapy: TAT)は対象外です

                A2. 精神・神経疾患 

                A2-1 精神疾患の新規治療薬創製に繋がる新規性の高い標的分子・標的経路

                • 以下の、新規な創薬標的分子や標的経路に関する研究を募集します。
                • 対象とする精神疾患:治療抵抗性うつ病、難治性てんかん、強迫症
                • 必須要件
                • ・ヒトでの病態との関係性が示されている標的分子・標的経路
                  ・臨床外挿性のある評価手法があること
                  (注意)以下は対象外です
                  ・ヒトに関する情報がない標的分子や標的経路
                          ・齧歯類で評価不能な標的分子や標的経路

                A2-2 精神疾患の病態形成に関与するグリア細胞機能を対象とする標的分子・標的経路 

                • 精神疾患の病態形成に関与するグリア細胞機能異常に着目した、新規な創薬標的分子や標的経路に関する研究を募集します。
                • 対象疾患:治療抵抗性うつ病、統合失調症、難治性てんかん
                  • 必須要件
                  • ・ヒトでの病態との関係性が示されている標的分子・標的経路
                    ・臨床外挿性のある評価手法があること
                    ・原発性疾患における中枢炎症を病態仮説とする研究であること
                    (注意)以下は対象外です
                    ・ヒトに関する情報がない標的分子や標的経路
                    ・発達障害などに関与する胎児/新生児期の炎症を対象とした研究
                    ・末梢炎症に起因する二次性中枢炎症を対象とした研究

                A2-3 神経変性疾患病態モデル動物に関する先進的な研究

                • 以下のような研究を募集します。

                  • 神経変性疾患の前駆症状(prodromal症状)を呈する疾患モデルの研究
                  • In vivoイメージング技術を用いたオルガネラダイナミクスと神経活動変化の研究(正常時、病態時)
                  • 神経細胞のresilienceや代謝に着目した疾患モデルの研究(脂質代謝、lipid droplet, 神経変性リソソーム障害などの研究を含む。新規標的探索を目的とする研究も含む。)(注意)リソソーム病関連遺伝子変異マウスは対象外です。

                A2-4 新規創薬標的探索のための独創的かつ堅牢な神経機能障害in vitro評価系

                ヒト神経変性疾患病態を反映した独創的かつ堅牢な神経機能障害in vitro評価系に関する研究を募集します。
                具体的には、神経変性疾患の発症や進行に寄与する細胞種の疾患フェノタイプや遺伝子発現プロファイルを反映した培養技術や評価系に関する研究に興味があります。神経細胞(Cortical、motor、dopaminergic cell)、ALS等の反応性アストロサイト、AD等で認められるミクログリアの多様な表現型などが対象です
                (注意)汎用さえている患者由来iPS細胞や、遺伝子変異導入モデルの利用は対象外です

                A2-5 神経変性疾患の新規創薬標的を見出す研究 

                神経変性疾患の予後に影響するような臨床知見や臨床試験データの解析に基づいて臨床外挿性の高い新規創薬標的を見出す研究、もしくはそれを見出すための評価系に関する研究を募集します

                • 例:やせ型の人は病態の進行が早く、また、発症初期ではカロリーを摂取することが標準治療とされているALSの臨床知見等をもとに、運動ニューロンのエネルギー代謝を上げることがALS治療標的となりうることを見出す

                A2-6 中枢神経系疾患における新規バイオマーカーに関する研究 

                • 精神疾患・神経変性疾患領域における新規バイオマーカーおよびその測定技術について募集します。非臨床で活用可能かつヒトへの外挿性が高いバイオマーカー、患者の層別化につながる特異性の高いバイオマーカーや治療予測バイオマーカーに興味があります。
                • 特に以下の技術を優先します
                  ・アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症などの変性疾患に関する技術
                •   ・ミクログリアを特異的に検出できる評価系(ミクログリアとマクロファージを分離できるもの)
                    ・中枢での病態(例えば神経炎症)を評価できる非侵襲的な手法(イメージングなど)

                A2-7 新規BBB透過DDS技術 

                • 中枢標的薬剤(主にBBB透過が困難とされるモダリティを利用した薬剤)の全身投与を可能にする新規のBBB透過DDS技術を募集します。

                  A2-8 Nose-to-Brain ペプチド送達技術 

                  • 経鼻投与により、短鎖ペプチドを脳へ送達する技術を募集します。既存技術に対し、特に送達効率の観点で明確な優位性を有する技術を求めます
                  • 鼻腔および鼻粘膜の解剖生理学的な動物種差を考慮したヒトでのNose-to-Brain移行予測技術

                A3. 線維症、心血管疾患、眼疾患 

                A3-1 線維症を対象としたマクロファージの新規標的分子およびその探索研究

                ① MASHやIPFなどの線維症において線維化を治療できるマクロファージの新規標的分子を募集します。募集する標的は臨床試験の報告が無いものに限定し、以下を優先します

                • 疾患ー病因細胞ー標的分子の関係性が示されている
                • ジェネティックエビデンスがある標的やヒト臨床検体を用いたオミクス解析等から見出された標的
                ② 新規標的探索研究は以下の項目を重視した研究を募集します
                • オミクス解析を活用した探索研究
                • 病変組織を用いたトランスクリプトーム解析やGWAS解析等を活用した探索研究
                • Single cell解析等を用いることにより標的細胞・標的分子の関係を評価可能な探索研究

                A3-2 肝臓や肺の線維症のヒト臨床検体由来組織または細胞等を用いた治療薬候補の薬効検証に関する技術

                以下のような技術・研究を募集します。
                • 組織スライス等を用いた創薬標的の評価系
                • 線維症の病態を模倣した免疫細胞を用いた創薬標的の評価系
                • 上記を用いた創薬標的の妥当性検証

                A3-3 心不全新規治療標的の探索研究

                • ヒト心筋生検サンプルやiPS由来心筋細胞等を活用した心不全(HFrEF、HFpEF、心筋症など)に対する新規創薬標的の探索研究を募集します。見出された新規標的を基に、siRNAやAAVを活用したノックダウン・補充療法の創薬研究を目指します。

                A3-4 微小循環障害をきたす疾患を模倣した動物病態モデル

                • 微小循環を改善する化合物により改善が見込まれ、臨床の病態を反映する動物モデルを募集します。バックグラウンドに糖尿病がある動物を用いた疾患モデルがより好ましいです。
                   疾患例:2型心筋梗塞、INOCA、ANOCA、虚血性心疾患、脳小血管病、心房細動、HFrEF、HFpEF

                A3-5 黄斑変性疾患の新規病態モデル

                • ヒトへの外挿性が高い黄斑変性疾患(萎縮型加齢黄斑変性症やスタルガルト病など)の病態モデルを用いた創薬研究を募集します。
                  研究例:
                  ・病態誘導因子、遺伝子発現、病理などの面でヒト病態と近いin vitro、in vivo病態モデルの研究
                  ・上記モデルを用いた薬剤評価の研究

                  A3-6 網膜色素変性症の原因遺伝子非依存的な治療を目指した創薬研究

                  網膜色素変性症について、以下を募集します。
                  • 原因遺伝子によらず治療効果が期待できる創薬標的分子・作用機序、薬剤候補(複数の病態モデルや患者サンプルを用いた解析データがあるものに限ります。)
                  • 過剰発現またはノックダウンで、原因遺伝子によらず治療効果を示しうる遺伝子の探索研究

                A4. 遺伝子治療、ほか 

                A4-1 遺伝子治療の新規標的およびその探索研究

                • 遺伝子の補充、ノックダウン、それらの組み合わせで治療効果の期待される、遺伝子治療の新規標的を募集します。In vitro/in vivo評価系にて標的の効果の検証が可能な研究や、オミクス解析やゲノム解析が可能な患者細胞・組織を用いた新規標的の探索研究を重視します。遺伝子補充の場合、薬効面で差別化につながる改変配列や、ヒト以外の種とのキメラ配列も含みます。
                • 必須要件:
                • ・AAVで送達可能な組織、細胞種で治療効果を発揮する標的に限ります(血中への分泌で薬効が発揮される場合も含みます)
                  ・単一遺伝子ノックダウンの新規標的としては、臨床で既知のものも含みますが、既存の治療法と比べて、遺伝子治療によって差別化が期待できる標的に限ります
                   (注意)対象疾患:日米で10万人に1人以下の有病率の疾患は対象外です。

                    A4-2 染色体異常症の新規治療アプローチに関する研究

                    • 難治性の染色体異常症(転座、欠失、トリソミーなど)に対する、臨床検体由来組織/細胞、モデル動物等を用いた標的候補の薬効検証に関する技術を募集します。遺伝子治療が適した標的に限定します。
                    • 研究例:
                    • ・疾患iPS細胞やヒト由来オルガノイドを用いた病態メカニズム研究
                      ・臨床病態を模したOrgan on a chipの確立検討
                        ・臨床病態を模した新規動物モデルの確立検討
                        ・上記を用いた創薬標的の妥当性検証 

                    A4-3 リピート配列を正常化する遺伝子治療に関する研究

                    • ハンチントン病、脊髄小脳変性症、筋強直性ジストロフィー1型などのリピート病に対して、リピート配列を正常化する新規遺伝子治療技術を募集します。ゲノム編集技術も含みますが、よりリピート配列選択性が高く、有効性だけでなく安全性も高い手法を重視します。
                    •  (注意)AAVを用いた遺伝子治療への応用を想定しているため、低分子化合物は対象外です。

                    A4-4 プロテアーゼ阻害により治癒が望める疾患研究

                    • プロテアーゼが病態に関与する疾患に関する研究を募集します。特に、以下のような疾患を対象とします。
                        ・細胞外に分泌される単一プロテアーゼの阻害により大幅な病態改善が期待できる
                        ・全身性に対象となるプロテアーゼを阻害しても安全性の懸念がない、あるいはほとんどない
                        ・動物モデルや細胞レベルで病態への関与が示されている
                        ・動物の病態モデルがあることが望ましい
                        (注意)以下は対象外です。
                        ・3つ以上のプロテアーゼを阻害しないと病態改善が望めないもの
                        ・細胞外に分泌されないプロテアーゼ
                        ・既存の治療薬で十分治療可能なもの
                        ・がん
                        ・感染症

                       

ページトップへ