疾患領域別の研究課題

A. 疾患領域別の研究課題

A1. オンコロジー 

A1-1 抗腫瘍免疫療法に対する不応答もしくは耐性の克服を目指した新規標的および評価系に関する研究(説明動画

以下で示す研究を募集します。特にヒト細胞で機能が確認されているテーマを優先します。

  • 抑制性免疫細胞の新規標的あるいは標的スクリーニングに関する研究:特にMDSCsやinnate lymphoid cells (ILCs) に関する研究
  • がん細胞の新規標的あるいは標的スクリーニングに関する研究:特にがん選択的に新規がん抗原を付与する/高めることの出来る新規メカニズムや標的分子に関する研究
  • 腫瘍におけるT細胞機能抑制に着目した新規標的あるいは標的スクリーニングに関する研究:特にT cell exhaustionに関する研究

A1-2 エピジェネティクス関連分子の阻害による、画期的な抗がん剤開発に関する研究・技術(説明動画

以下の研究を募集します。

  • 特定のエピジェネティクス関連分子に作用する化合物の機序解析により、その化合物が関与する癌種・患者群を特定する方法論
  • 生体におけるエピジェネティック状態を反映した、in vitroスクリーニング技術

A1-3 Undruggable proteinに対する低分子創薬に関する研究・技術(説明動画

  • Undruggableで一般に難標的とされる標的群に対して、ヒットまたはリード化合物を取得するための新規技術を募集します。特にエピジェネティクスに関連するタンパク質を対象とした研究に興味があります。

A1-4 ヒトの膵臓がんの特徴を有し、薬効や薬剤分布の測定が容易に可能な膵臓がんモデル(説明動画

  • ヒトの膵臓がんは間質が多く、血管が少ないなどの特徴から特に高分子の分布が難しく、薬効も出しづらいと考えられています。これらのヒト膵臓がんの特徴を模したモデルを用いて治療候補薬の薬効を詳細に解析することが出来れば、臨床での治療効果を予測するための有益なデータとなると期待されます。既存の膵臓がんモデルに比較し、さらにヒト膵臓がんの特徴を反映しているモデルや、膵臓の自然発症モデルでありつつも薬効の解析がしやすいといった特徴を持ったモデルを募集します。

A1-5 標的タンパク質分解誘導薬に関する研究(説明動画

標的タンパク質分解誘導薬に関する以下の研究を募集します。

  • 臓器特異的またはがん特異的に標的タンパク質分解を引き起こす新規メカニズムに関する研究。ただし、既報告のE3リガーゼに関する研究は対象外とします。
  • ユビキチンプロテアソームシステム以外の新たな分解メカニズムを利用した研究
  • Monovalent protein degrader / Molecular glueを取得するための新規スクリーニング手法/技術

A1-6 がん治療への適用を目的とした、ユニークな特性を有する抗体または抗体様結合分子の探索研究(説明動画

  • 腫瘍細胞・組織、免疫細胞、間質細胞などを標的とする抗体または抗体様結合分子(フラグメント抗体を含む)の探索研究を募集します。得られたバインダーを新規抗体薬または細胞治療薬研究に利用します。ユニークな標的(分子)の探索段階の研究も本募集に含みます。

A1-7 adoptive T cell therapyの薬効増強・腫瘍特異的な活性化技術(説明動画

以下のいずれかの要件を満たす研究を募集します。

  • T細胞の機能を高める新規分子の検証研究。研究例:疲弊耐性、免疫抑制環境の克服、細胞傷害活性増強など。
  • 固形癌における薬効増強に繋がる技術
  • T細胞活性化を制御する技術 (腫瘍特異的な活性化技術)

A2. 精神・神経疾患 

精神疾患の新規治療法に繋がる新規性の高い生物学的研究を募集します。

対象とする精神疾患:大うつ病、不安症、統合失調症、自閉症

A2-1 神経炎症に関する研究 (A2-1~3 説明動画

  • 中枢炎症を伴う精神疾患における治療標的、およびその妥当性を判断しうる、原発性中枢炎症モデルとその評価手法を募集します。当該モデルの臨床外挿性を担保できる病態指標としてのバイオマーカーがあると望ましいです。

A2-2 新規創薬標的を見出す研究 

  • ヒト疾患との関係性が強く示唆される独自性の高い標的探索研究を募集します。

A2-3 原因物質、受容体、パスウェイに関する研究 

  • 特定の責任脳領域の異常を呈する精神疾患(上記対象疾患)の原因物質、受容体、パスウェイに関する研究を募集します。ヒトにおいて責任脳領域が特定できており、その病態をげっ歯類の非臨床モデルで再現可能である研究を募集します。臨床における知見や情報を基にした研究を優先します。

神経変性疾患の新規治療法に繋がる新規性の高い生物学的研究を募集します。

対象とする神経変性疾患:アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、前頭側頭葉変性症、パーキンソン病、多系統萎縮症、レビー小体型認知症、筋萎縮性側索硬化症

A2-4 神経炎症に関する研究 (A2-4~7 説明動画

  • 疾患の進行に関連したグリア特異的機能調節に関する研究を募集します。特に神経炎症、細胞内代謝、細胞老化にフォーカスした研究に注目しており、関連する独創性の高いアイデア(これまで一般的に注目されていなかった経路、標的の活性調節など)を期待します。

A2-5 新規創薬標的を見出す研究 

  • 疾患の予後に影響するような臨床知見、臨床試験データの解析に基づく研究を募集します。

A2-6 神経細胞に関する研究 

  • 神経細胞の生体における機能喪失を積極的に抑制する機構に関する薬理学的研究を募集します。神経細胞への直接的な保護作用に加え、上記のグリア系細胞の活性調節を介した新たな神経保護作用機序の解明に繋がる研究も対象です。

A2-7 動物病態モデルに関する研究 

  • トランスレーショナル研究に有用な動物病態モデルの研究を募集します。

A3. 眼疾患 

A3-1 萎縮型加齢黄斑変性症に対する創薬研究に有用な動物モデル確立に関する研究

  • ヒトの萎縮型加齢黄斑変性症の病態を模倣した動物モデルの確立に関する研究を募集します。

A3-3 網膜色素変性症に対する遺伝子非依存的治療を目指した創薬標的分子/メカニズムに関する研究

  • 網膜色素変性症を引き起こす遺伝子変異は多岐にわたるため、個々の変異に対応した遺伝子依存的な治療法では救える患者さんの数が非常に限定的です。そのため遺伝子非依存的な治療を目指した創薬標的分子に関する研究を募集します。ただし、複数の病態モデル動物での薬効が確認されている研究、または臨床検体を用いた解析から期待される研究に限定いたします。

A3-4 in vivo視覚高次評価技術

  • in vivoでの光受容体を介したシグナルを検出・評価する手法を募集します。

A4. 免疫関連疾患 

A4-1 難治性免疫疾患または線維症に関わる新規標的または新規標的探索(説明動画

  • 募集する新規標的は、臨床試験の報告が無いものとし、既知の分子でも構いません。
  • 1.新規細胞表面標的
    2.新規細胞
  • 新規標的を同定/取得済みの場合、下記の項目に重点を置いた研究を優先します。
  • ・疾患-病因細胞-標的分子の関係性が示されている
    ・in vitro または in vivo 評価系にて検証が可能(動物モデル、臨床検体など)
    ・細胞表面標的の場合、抗体を取得している
  • 新規標的探索研究の場合、下記の項目に重点を置いた研究を重視します。
  • ・既存治療薬の投与前後における臨床検体の収集とオミクスデータ解析を活用した新規治療標的の探索研究
    ・ヒト末梢血免疫細胞および病変組織を用いたトランスクリプトーム解析 (scRNA-seq, CITE-seq, LIBRA-seq, Spatial transcriptomics)及びGWAS・PheWAS解析、全エクソーム解析を活用した新規治療標的の探索研究

A4-2 ヒト臨床検体由来組織または細胞等を用いた治療薬候補の薬効検証に関する技術(説明動画

  • 難治性の免疫疾患(線維症や中枢症状を伴う自己免疫性疾患など)に対する臨床検体由来組織または細胞等を用いた治療薬候補の薬効検証に関する技術を募集します。
  •    研究例;
    ・疾患iPS細胞やヒト由来オルガノイドを用いた病態メカニズム研究
    ・臨床病態を模したOrgan on a chipの確立検討
    ・臨床病態を模した新規動物モデルの確立検討
    ・上記を用いた創薬標的の妥当性検証

A5. 心血管・代謝疾患 

A5-1 NASHに対する新規治療標的分子の提案、またはユニークなスクリーニング技術を用いた新規治療標的分子の探索研究(説明動画

  • NASHに対する新規治療標的分子を募集します。
  • (注意)
    肝臓中脂質を低下させる機序の標的は対象外とします。

  • また、NASH患者由来の疾患iPS細胞やオルガノイド等を用いたスクリーニング技術による新規標的分子の探索を目的とした探索研究も募集します。

A5-2 心不全新規治療標的の探索研究(説明動画

  • ヒト心筋生検サンプルやオルガノイドを活用した心不全 (HFrEF, HFpEF)に対する 新規創薬標的の探索研究を募集します。見出された新規標的を基に、siRNAやAAVを活用したノックダウン・補充療法の創薬研究を目指します。

A5-3 微小循環障害をきたす疾患を模倣した動物病態モデル(説明動画

  • 微小循環を改善する化合物により改善が見込まれ、臨床の病態を反映する動物モデルを募集します。
  •    疾患例:type II myocardial infarction, coronary artery disease, Raynaud’s phenomenon, Scleroderma, Buerger’s disease, cerebral small vessel disease, atrial fibrillation, HFrEFなど

A6. 疾患メカニズムに基づく創薬 

A6-1 遺伝子治療の新規標的に関する研究(説明動画

  • ノックダウン等の発現抑制によって治療効果が期待できる新規標的因子に関する研究を募集します。最終的にはAAV遺伝子治療への応用を考えていますが、AAVベクターを用いたデータ等は必須ではありません。また、発現抑制に遺伝子補充療法を組み合わせ高い治療効果を発揮するような標的の組み合わせに関する研究についても募集します。標的臓器として中枢領域を優先しますが、肝臓、筋肉、心臓、膵臓などにも興味があります。
  • 遺伝子治療用ベクターに搭載し、肝臓から発現・分泌させることで疾患の治療に繋がる新規因子、例えばペプチド、タンパク質(改変タンパク質を含む)、抗体等のバイオロジクス、に関する研究を募集します。発現させる組織は肝臓ですが、治療効果を発揮する組織は全身どこの組織でも構いません。

A6-2 新規Non-coding RNAまたはNMD感受性mRNAの新規創薬標的に関する研究

特にOligonucleotide等を用いて治療可能な、以下のメカニズムや標的に関する研究を募集します。

  • 内在性のNon-coding RNAまたはNMD感受性mRNA のsplicing調節あるいは塩基置換
  • Non-coding RNAまたはNMD感受性mRNAの機能的RNAへの変換
  • Non-coding RNAの機能抑制
  • これらの治療標的を同定する画期的な探索研究も対象に含みます
  • (注意)
    micro RNAおよびがんを対象とした研究は対象外とします。

A6-3 プロテアーゼ阻害により治癒が望める疾患に関する研究

プロテアーゼが病態に関与する疾患に関する研究を募集します。特に、以下のような疾患を対象とします。

  • 細胞外に分泌される単一プロテアーゼの阻害により大幅な病態改善が期待できる
  • 全身性に対象となるプロテアーゼを阻害しても安全性の懸念がない
  • 動物モデルや細胞レベルでヒト病態への関与が示されている
  • 動物の病態モデルがあることが望ましい
  • (注意)
    以下の研究は対象外とします
    ・2つ以上のプロテアーゼを阻害しないと病態改善が望めないもの
    ・既存の治療薬で十分治療可能なもの
    ・癌を対象とした研究

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